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新潟県立リウマチセンターは,2006年に現在の地に移転した新潟県立新発田病院に併設する施設として開設された国内初の県立リウマチ専門施設です.当センターはリウマチ(以後RA)医療を専らとする一方,総合病院(=県立新発田病院)と人材面,設備面での連携や電子カルテフォーマット共通化を図ることなどにより幅広い分野での充実した集学的医療が行えるようになりました.このため,先進医療の提供,24時間救急患者受け入れ,合併症の内科的治療も対応可能です.また,患者さまや関連医療機関への情報センターとして,RAに関する情報の集積,分析,発信も行っています.さらに,新潟大学,京都大学免疫・膠原病内科などと連携した臨床研究や基礎研究も行っています.
RAにおいては専門病院とかかりつけ医の病診連携が右に示した理由により重要です.病診連携の形は各地域にあった形で進めるべきでしょうが,かかりつけ医と専門医はそれぞれの機能の違いにより役割を上手に分担できる体制を整えることが基本です.
新潟県は財政に余裕のある県ではありませんが,RAの地域医療に関しては先進県といえると思います.日本初のRAセンター(愛媛県松山赤十字病院)開設翌年の1981年には県立瀬波病院リウマチ科が設立され,その後25年にわたり県内唯一のRAセンターとして機能してきました.その後,1)設備や施設老朽化,2)アクセスの悪さ,3)麻酔科や小児科の医師不足といった県立瀬波病院の問題点を解消し,RA病診連携・地域連携の拠点となり得る施設として,新潟県のバックアップにより全国初の県立RA専門施設である当センターが設立されました.当センターは県および地域の連携医療の中枢的役割を担う責任がありますが,幸運なことに,県内4地域(上越,中越,下越,阿賀北)とも地域内にRA専門医がおり,かつ救命救急センターを備えた総合病院があり,新潟県では,地区内での連携医療ができる環境が整っています.
病診連携,病病連携,地域連携を含む連携医療の推進に重要なことは,患者さまを搬送する場合でもカルテの開示や電子メールによる患者情報の共有化に加え,可能なかぎり,医師どうしが顔をみながら,あるいは声を聞きながら連携することが大切だと考えています.その点,新潟県の場合,各施設の医師どうしの交流があり,お互いに既知の間柄であることが強みですが,現在,試みとして受け入れた患者さまを診療・治療する際に携帯電話の端末を利用して動画を双方向で交信し,テレビ電話のような形式をとる方法を一部に取り入れています.
RAの薬物療法に生物学的製剤が用いられるようになったことに伴い,右にあげる6項目の視点から地域連携の重要性が増し,今日では待ったなしに必須となったといえます.
生物学的製剤は圧痛,腫脹を改善し,関節破壊の進行を抑制するといった"光"がある一方,迅速に適切な対応が求められる副作用が発現することもあるといった"影"の部分があります.この生物学的製剤の"光”を患者さまへの福音となるように使いこなすには,連携が必然です.必然となった連携においては,かかりつけ医と専門医は立場と役割が異なるだけで,知識も情報も対等でなければなりません.対等な関係を築くための手段のひとつが勉強会です.新潟県では各方面からの協力を得て積極的に勉強会を開催できていることもあり,他県よりもうまく機能しているように思います.
また,RA治療の連携には,地域連携だけでなく,院内外の他科とのチームワークも欠かせない要素です.
当センターでの生物学的製剤を用いた治療の枠組にはいくつかの特徴があります.
ひとつは,阿賀北地区(新潟県を横切る阿賀野川の北)内のサテライト施設やかかりつけ医院に出向き,生物学的製剤の導入をサポートする「生物学的製剤チーム」の存在です.これは医師,看護師,ケースワーカーからなるチームで,その機能と活動は地域において高い評価を頂いています.ただし,経済的には赤字で,地域連携の重要性に理解を示してくれる県の理解と協力のもとに活動が可能となっている状態です.
もうひとつは教育入院のシステムです.これは患者さまに1週間入院していただき,医師,看護師など,RA治療に携わる全スタッフが講義を行い,患者さまに病識,薬物療法,セルフマネージメントを学んでいただくとともに,患者さまの不安やストレスを取り除くことを目的としています.この1週間のスケジュールはかなりタイトなものですが,ねらいどおりの成果も得られていると思います.また,このシステムでは,各部署でかなり内容の濃いガイドブックを作成していただいていますが,その作成作業をとおして各スタッフが研鑽を重ねるとともに,院内の連携が強化されたという副次的効果も得られています.
また,生物学的製剤に限ったことではありませんが,当センターでは来院される患者さまが自由に利用できる「情報センター」を設置・開放しています.ここには自在にインターネットで情報を引き出せるようになっている4台のパソコンが設置されています.また,RAおよびRA薬物療法に関連する各種印刷物もゆっくり閲覧できるようになっています.この情報センターを利用した患者さまの能動的自己啓発と医療側が情報提供する月1回のリウマチ教室の開催により,患者さまには多くを学んで頂けています.



RA患者さまのQOL は,抗リウマチ薬,MTXなどの免疫抑制剤,そして生物学的製剤と,薬物療法の進歩によりADLが向上されるにつれ,少しずつ改善してきています.とくに生物学的製剤が使用されるようになってからは,「痛みのない日常が信じられない」「朝ごはんを作れるようになってうれしい」と笑顔で話す患者さまに会うことが多くなりました.とても嬉しいことです.
しかし中には疼痛が改善したことで「そんなに動いて大丈夫かしら」と思うくらい仕事や家事を頑張ってしまう方がいます.そのために,炎症が治まりきらないということもあります.薬が強くなるということは,患者さまの自己管理がさらに重要になるということです.薬のこと,安静と運動のバランスや関節保護など,日常生活における注意点などについてよく理解し,セルフマネジメントしていけるように指導することは,今も昔も変わらぬRA看護の基本です.
当センターでは,生物学的製剤を用いる患者さまには,医師,看護師,必要に応じて薬剤師がその内容について説明しています.医療費に関しては医事職員も対応しています.患者さまには十分に理解したうえで治療を受けていただいています.
当センターには遠方から来院する患者さまも多く,生物学的製剤(特に点滴投与製剤)の投与は,他の病院・医院と連携して実施しています.連携先の施設では不安を抱える看護師もいらっしゃるようで,1人でも多くの看護師にRAとその治療法,看護ケアの方法について学んでいただけるよう,看護師と医師のための勉強会を開催しています.よりよいRA看護が地域で提供されるよう,RA専門病院の看護師としてこれからも地域医療機関に対する啓発活動に努めていきたいと思っています.
治療法は進んできたとはいえRAが患者さまに及ぼす身体的・精神的な苦痛および経済的な負担は大きなものです.私たちはそれらをよく理解し,患者さま個々の問題を共に考え,支援していきたいと思っています.

ノーベル賞を受賞した約50年前のステロイド剤の効果の発見は,RA治療に最初のパラダイムシフトをもたらしました.ミサイル攻撃的にサイトカインを叩く生物学的製剤の登場は,これに匹敵するもうひとつのパラダイムシフトをもたらしたとも言えると思います.しかしながら現実的には「これでRAが治る」というわけにはいきません.生物学的製剤がMTX以上の切れ味の良さを備えていることは明らかですが,1)生物学的製剤を用いても2-3割の患者さまにおいては寛解状態に導入することができない,2)時間の経過とともに効果が減弱する場合もある,3)高価である,4)感染症のリスクがあるといった課題があることも事実です.
しかし,臨床医が多くの治療の選択肢を手に入れることができたということは,紛れもない事実と断言できるでしょう.しかも関節破壊の進行抑制を可能にする選択肢であるので,日常診療をとおして,非常に心強い選択肢だと実感しています.
ひとつの薬でRAのすべてをカバーできるものはあり得ないことは自明であり,例えばサイトカインとは別のパスで炎症や関節破壊を抑制する薬剤が将来的に私たちの「持ち駒」になれば,選択肢はさらに豊富になる可能性もありますが,「今」という時代は,疼痛を除去し,関節破壊の進行を抑制できる選択肢を手にすることができた素晴らしい時期であると考え,一人ひとりの患者さまのQOL向上にいっそう注力したいと考えています.
2010年3月現在
| 名称 | 新潟県立リウマチセンター |
|---|---|
| 所在地 | 新潟県新発田市本町1丁目2番8号 |
| 院長 | 村澤 章 |
| 開院 | 平成18年11月(新潟県立瀬波病院から移転) |
| 診療科目 | ●リウマチ科 ●リハビリテーション科 |
| 病床数 | 100床 |
| 施設認定 | ●日本リウマチ学会教育認定施設 ●日本整形外科学会研修施設 ●日本リハビリテーション医学会研修施設 ●日本手の外科学会認定研修施設 |
2010年3月現在
| 昭和47年 3月 | 新潟大学医学部卒 |
|---|---|
| 昭和47年 5月 | 新潟大学医学部整形外科入局 |
| 昭和56年 4月 | 新潟大学医学部講師 新潟県立瀬波病院リウマチセンター赴任 |
| 平成6年 4月 | 新潟県立瀬波病院リウマチセンター副院長 |
| 平成13年 4月 | 新潟県立瀬波病院リウマチセンター院長 |
| 平成18年 11月 | 新潟県立リウマチセンター 院長 (現在) |
| 平成20年 4月 | 新潟大学医学部医学科臨床教授 |
- <資格>
- 日本リウマチ学会リウマチ専門医・指導医
日本整形外科学会整形外科専門医
日本リハビリテーション学会専門医
- <役職>
- 日本リウマチ学会理事(平成17年4月~)
中部リウマチ学会理事
日本リウマチ・関節外科学会理事(平成18年34回会長)
日本臨床リウマチ学会評議員
リウマチの外科研究会世話人(平成7年24回会長)
リウマチセンター間連絡会世話人(平成19年7月主催)
日独リウマチ外科研究会世話人
日本リウマチ財団評議員
注釈:ヒュミラ®の添付文書に定める用法・用量は以下の通りです.
■用法・用量(関節リウマチのみ抜粋)
通常,成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として40mgを2週に1回,皮下注射する.なお,効果不十分な場合,1回80mgまで増量できる.
安全性情報の詳細につきましては,製品添付文書をご参照ください.
製品基本情報「基本製品情報」ページへ











ら
![図:県立リウマチセンター運用システム[→拡大して見る]](../images/facilities/img_074.jpg)


![図:RA病診連携[→拡大して見る]](../images/facilities/img_077.jpg)

![図:新・RAマネジメントのガイドライン(2002年ACR改訂版)[→拡大して見る]](../images/facilities/img_079.jpg)





生物学的製剤は,原則としてメトトレキサート(MTX)に治療抵抗性の患者さまが投与の対象となります.その導入にあたっては,外来とは別に1時間ほどの面談時間を設け,効果や副作用,5年10年先のRA経過予測等を説明し,十分に理解・納得を得るようにしています.薬剤の選択にあたっては全ての生物学的製剤の説明をしたうえで,MTX内服の可否や自己注射が可能か否か,生活・治療環境に投与間隔がフィットするかなどを考慮して,患者さまに選択していただいています.
生物学的製剤は,発症早期で進行が早い方においてこそメリットが生かされるとは思いますが,現段階では症状に苦しむ目の前の患者さまから投与を開始している状況です.当院での生物学的製剤使用率は現在15%程度ですが,治療抵抗性の患者さまには発症早期から投与していくことが必要であるため,今後も増加すると考えています.RAの早期発見・早期治療のためには,地域のかかりつけ医の先生方の御協力が欠かせません.勉強会などを通じて病診・病病連携を深めるとともに,RA治療に対する知識の普及をどのように行うかが今後の課題だと思います.
ヒュミラ®は病期,年齢を問わず期待に即した効果が得られますが,その効果がもっとも顕著にみられるのは生物学的製剤未使用例にMTXと併用した場合です.また,2週間毎の投与,自己注射が可能といった点は,患者さまの利便性に大きなメリットです.副作用の面では,ヒュミラ®投与後の肺炎については,一般抗菌剤で治療可能なものは経験していますが,幸いなことにニューモチスティス肺炎やサイトメガロウイルス肺炎などの経験はありません.当初はいずれの生物学的製剤も間質性肺炎を含む肺障害のスペクトラムは同様と予想していたのですが,実際に使用してみると薬剤により微妙に異なる印象があり,今後症例を重ねて検討したいと考えています.