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![]() 福井総合病院 院長・理事長 林 正岳 先生 |
![]() リウマチ膠原病科部長 杉本 和則 先生 |
![]() リウマチ膠原病科医長 尾島 朋宏 先生 |
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新田塚医療福祉センター福井総合病院は1962年(昭和37年)に福井病院として設立され,10年後の1972年に現在の名称に変更となった福井市北西部の福井県中核病院です.本院は2009年5月に約5km北西に新築移転し,315床(亜急性期病床20床,回復期病床42床,オープンベッド20床を含む)を有し,入院と救急を中心に行う施設となりました.当院では,救急医療対応・受け入れ体制の確立,DPCの導入,7:1看護体制の確立に加え,回復期病棟を利用して十分なリハビリテーション(以後リハ)を含む機能回復治療,デイサービス,デイケア,さらには在宅医療(訪問看護,訪問リハ),各種ドック など,急性期から在宅までの一貫した医療を行っています.一般的には高度先進医療の提供と十分な期間の入院治療の両立は困難と言われていますが,これを両立させないかぎり住民のための医療とはならないと考え,その実現に向け努力しています.
一方,総合かかりつけ医の役割を担う外来診療は,『福井総合病院』跡地で現在改築中の『福井総合クリニック』(2011年春新装工事完成予定)にて行っています.

当院のリウマチ膠原病科では,生物学的製剤を含めた薬物療法を中心とする内科専門医,人工関節置換術などの外科的治療を中心とする整形外科専門医,リハ治療を中心に行うリハビリ専門医がRAの患者さんを診ています.RA診療については,"科の垣根を越えた治療"という理念が提唱され始めてから久しいものの,これは時として言葉だけが一人歩きし,実践は容易ではないとも言われています.しかし,当院ではそれぞれの医師が専門性を活かし,互いの専門的視点からの意見交換,共同診療も日常的に行い,文字通り"科の垣根を越えた"連携治療が行われていると自負しています.
生物学的製剤の使用増加に伴い,連携・協調はいっそう重要になってきています.新装改築中のクリニックでは建物の構造にも連携をいっそう促進するような工夫をこらし,病院としてもバリアフリーの診療をサポートしています.

当院では,リウマチ膠原病科と整形外科,リハビリテーション科がそれぞれの科の特徴・強みを活かしつつ協調しあい,RA患者さんのトータルケアを行っており,リウマチ膠原病科では薬物療法が主体となります.
当科でのRAに対する薬物療法の基本方針は,RAと診断された患者さんにはメトトレキサート(以後MTX),非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs),ステロイドなどで治療を開始し,この治療法を用いてもCRP値の改善がみられない患者さんには積極的に生物学的製剤を用いるというものです.しかし,関節破壊が始まる前にRAの進行を抑制し,患者さんのADL,QOLを守っていくことが非常に重要ですので,NSAIDsやステロイドで所定の効果が得られない場合には早めにMTXと生物学的製剤による治療に切り替え,早期からの寛解導入をめざしています.その手段として生物学的製剤は非常に心強い存在です.
日々の診療では,診察の前に患者さんの状態の概要を把握し,問診を含む診察でその状態を確認することを目的に,「日常生活についての調査」という問診票(図1, 2)に記入していただいています.また,より容易に,かつもれなく患者さんの関節症状の変化を一覧できるようなカルテフォーマットを考案し,それを診療科共通の統一フォーマットとして用いています(図3).
生物学的製剤の最大のメリットは,関節予後が改善し,これに伴って機能予後,生命予後の改善,QOLの向上が望めるという点ですが,原則としてMTXでコントロール不十分な患者さんを投与の対象としています.
[ライフスタイルに合わせて生物学的製剤の種類を選択]
生物学的製剤のうち,TNFα阻害薬の方がIL-6阻害薬より臨床報告も多く,効果も副作用も多角的に検討されており,注意すべきポイントもかなり明らかにされているため,私はTNFα阻害薬を優先して使用しています.
TNFα阻害薬は,投与方法,投与間隔,費用を患者さんに提示し,患者さんご自身のライフスタイルや好みに応じて薬剤を選択していただきます.多くの患者さんでは通院回数が薬剤選択のキーとなるようです.
皮下注射製剤を選択した患者さんのうち,比較的若い方では自己注射を選択される方が増えています.最初は「自分で自分に打つ自信がない」「こわくてできない」と躊躇する方も多かったのですが,看護師の指導のもとで実際に体験していただくと,「思ったより簡単だった」と仰る方が多いです.注射に伴う痛みは部位によって異なりますが,自己注射の場合はおなかに打つので,痛みも比較的少ないようです.また,自分で何回か経験すると,痛くない部位がわかってくることも自己注射の利点のひとつかもしれません.こうした患者さんの声を聞くと,自己注射に移行する患者さんが今後も増えていくと思われます.
[きめ細かな投与開始前の診察が副作用対策のキーポイント]
副作用対策では投与を開始してからよりも,投与開始前の診察が大事だと考え,結核や脱髄疾患の合併・既往・リスクのある患者さんを注意深くスクリーニングしています.また,慢性気管支炎,細気管支炎,気管支拡張症などを合併している患者さんでは肺炎や非結核性抗酸菌症の発症リスクが高くなるので,これらの合併症の有無を見極め,リスクに応じた細心の注意を払うことが副作用対策では重要です.さらに,慢性咳嗽のある患者さんでは,CTを撮ってみると中葉に陰影がある,副鼻腔気管支炎を併発しているなどの異常がみられることが多く,このような方ではニューマクロライド系薬剤を使用するなど,その人にあった治療法を考えるようにしています.
なお,RA薬物療法においては,ステロイドによっても生物学的製剤と同等以上の肺炎発症リスクがあり(図4),NSAIDsによっても救急搬送が必要となるような有害事象が伴う(図5)ことも報告されております.生物学的製剤では易感染性に注意が必要ですが,ステロイド,NSAIDs減量・投与終了が期待できるため副作用が回避できる可能性も考えられます.
また,自己注射をされる患者さんには,一般的な感染対策指導シートに加え,熱発,気道症状,腹部症状,動悸・息切れなどの投与時セルフチェックリストをお渡しし,症状がある場合や不安に感じる場合は投与の是非を医師に相談するよう指導しています.このような指導で,自己注射をされる患者さんでの副作用リスクは外来で投与される患者さんの場合と同等になると考えています.
当院は福井県のセンター的病院でもあるため,地域の開業医の先生方との情報交換会を開催し,それを積極的にリードするよう努めています.この会は勉強会とケースカンファレンスを兼ねたような会で,おもに,地域の開業医の先生方から治療に難渋した症例や非常に効果があった症例などをご提示いただき,検討しあうなど,地域全体の底上げに注力しています.とくに生物学的製剤使用にあたっては,県内で唯一のリウマチセンター間連絡会に所属するリウマチ膠原病科を有する施設として大きな責任を感じています.
また,当院では,登録かかりつけ医が利用できるオープンベッドを回復期病棟に確保し,院長が率先して地域の病診連携を推進する体制をとっています.こうした取り組みの結果を反映してか,2009年にRAあるいはRA類縁疾患で受診した患者さんの約60%は,他院からの紹介患者さんでした.この中には,診断が非常に困難な患者さんの診断依頼,生物学的製剤の導入や経過フォロー,リハ導入・指導の患者さんが多数含まれておりました.

当院の大きな特徴のひとつは,リハへの注力です.当院のリハビリ科は,総合病院であるため,RAの患者さんだけでなく,脳血管障害,神経・筋疾患の患者さんの機能回復治療にもあたりますが,リハビリテーションセンターは480㎡と広く,総数70数名のOT/PTがリウマチ膠原病科および整形外科と密に連絡をとりあいながら,担当制によるきめ細かい診療を行っております.
当院ではリウマチ膠原病科,整形外科,リハビリ科の医師,看護師,OT/PT,PO(義肢装具師),MSW(医療ソーシャルワーカー)など,RAに取り組むスタッフ全員によびかけるカンファレンスを月1回行い,医師だけでなく,全スタッフの知識と意識の向上をはかり,全員が同じ志で患者さん中心医療に取り組めるよう努力しております.そこでは,主催者は医師ですが,看護師からの生物学的製剤の自己注射に関する詳細な実態報告,実際にリハ指導に携わっているOT/PTの視点からの症例検討などをテーマとしてとりあげています.こうした試みは,施設としての質の向上に大きく貢献するものと考えています.
また,当院では臨床薬理試験を実施する「臨床薬理センター」(64床)も併設しており,新薬の第Ⅰ相から第Ⅲ相開発治験も実施しています.治験に参加すると,医師だけでなく,すべてのスタッフが新しい知識を吸収できることに加え,自発的な研鑽心が高まってきます.これも,結果的に当院の質を高め,患者さんにより深い満足を得ていただけることにもつながるものと確信しています.
生物学的製剤はRA患者さんに多くの福音をもたらしました.それについては改めて述べるまでもありません.また,生物学的製剤の使用増加に伴って,本来の意味での患者さんを中心とした内科と整形外科の連携の必要性も高まってきていると思います.それを実現するために,医師をはじめとする医療スタッフが知識レベル向上に励み,よりよい診療体制を追求することが求められていると思います.
2010年7月現在
| 名称 | 福井総合病院/福井総合クリニック |
|---|---|
| 所在地 | 福井県福井市江上町第58号16番地1 |
| 病床数 | 315床 |
| 診療科目 | ●内科 ●脳神経外科 ●泌尿器科 ●リウマチ膠原病科 ●整形外科 ●リハビリテーション科 ●産婦人科 ●放射線科 ●消化器内科 ●外科 ●小児科 ●皮膚科 ●耳鼻咽喉科 ●歯科 ●歯科口腔外科 ●眼科 ●精神科 ●神経内科 ほか |
| 沿革 | 昭和38年 福井病院開院 昭和40年 福井病院リハビリテーションセンター設立 昭和46年 福井総合病院に改称 平成12年 福井県リハビリテーション支援センターの委託をうける 平成15年 臨床研修病院指定 平成17年 (財)日本医療機能評価機構認定 |
| 施設認定 | ●日本内科学会認定医教育関連施設 ●日本整形外科学会認定研修施設 ●日本リハビリテーション医学会認定研修施設 ●日本リウマチ学会認定施設 など多数認定 |
2010年7月現在
| 資格 | 本整形外科学会専門医 日本リウマチ学会専門医評議員 日本リウマチ財団登録医 日本整形外科学会リウマチ認定医 日本体育協会公認スポーツドクター 日本医師会健康スポーツ医 日本整形外科学会スポーツ認定医 日本リハビリテーション医学会臨床認定医 厚生省義肢装具等判定医 日本医師会認定産業医 福井県体育協会副会長 福井県スポーツ医・科学委員長 福井県リハビリテーション支援センター長 日本リハビリテーション病院・施設協会理事 |
|---|---|
| 専門分野 | リウマチ・関節外科・スポーツ外傷 |
2010年7月現在
| 資格 | 本リウマチ学会専門医・指導医・評議員 日本整形外科学会認定整形外科専門医 日本リウマチ財団登録医 日本整形外科学会認定リウマチ医 日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医 |
|---|---|
| 専門分野 | リウマチ・関節外科 |
注釈:ヒュミラ®の添付文書に定める用法・用量は以下の通りです.
■用法・用量(関節リウマチのみ抜粋)
通常,成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として40mgを2週に1回,皮下注射する.なお,効果不十分な場合,1回80mgまで増量できる.
安全性情報の詳細につきましては,製品添付文書をご参照ください.
製品基本情報「基本製品情報」ページへ

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![図 1. 問診票 表面[→拡大して見る]](../images/facilities/img_094.jpg)
![図 2. 問診票 裏面[→拡大して見る]](../images/facilities/img_095.jpg)
![図 3. 統一フォーマットカルテ[→拡大して見る]](../images/facilities/img_096.jpg)
![拡大図[→拡大して見る]](../images/facilities/img_097.jpg)
![図 4. 治療法別の感染症発症リスク[→拡大して見る]](../images/facilities/img_098.jpg)
![図 5. NSAIDs 投与例における1年間の重篤消化器障害例[→拡大して見る]](../images/facilities/img_099.jpg)


生物学的製剤の普及により、RAの治療が革命的に変わったといわれています.しかしながら,早期診断により早期から生物学的製剤を中心とした薬物療法で全ての患者さんに治癒が期待できるかというと,現実的にはなかなかそうはいきません.すでにRA罹病期間が長く壊れた関節がある方,合併症などのために薬を十分に使えない方,生物学的製剤を使っても十分に効果が得られない方などの問題は残っています.そのような場合には,通常,関節滑膜切除術や人工関節置換術が行われます.
患者さんにおいては,手術は恐ろしいと思われがちですが,とくに人工関節置換術については膝,股関節,肩,肘関節などの大きな関節において良い成績が出ています.施術のタイミングが遅れると手術が難しくなるばかりか,筋力低下,歩行障害,転倒の危険が増えるため,痛みや変形がひどい場合は積極的に手術を考える必要があります.
一方、生物学的製剤の普及に伴い,大関節の炎症が良好にコントロールされる患者さんが増え,膝に水が貯まって,頻繁に水を抜くような方は少なくなり,今まであまり注意が払われなかった手や足などの小さな関節の腫れや変形が問題になることが増えました.このような場合には,滑膜切除術や関節固定術が選択されます.関節を固定してしまった方が痛みもとれ,機能的にも問題がないと思われる場合には,滑膜切除や人工関節よりも,関節固定術が行われます.また,タイミングよく滑膜切除術を行えば,変形や将来の関節固定術を避けられる可能性があります.
RAの患者さんが,あちこちの関節の痛みや腫れで悩まされた時代は過ぎ去り,小関節に注目しつつ,これまでと違って健康な方に近い感覚で治療に望める時代になりました.少しでもその力になればと考えています.