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医療法人和香会倉敷広済病院は,関節リウマチ(RA)を中心に,医療・看護・介護が目指すべき急性期医療からターミナルケアまで,患者様一人ひとりが「その人らしい」生活を取り戻し,明るくのびのび生き生きと暮らして頂ける医療の提供をモットーとした地域密着型の病院です.
数年前までは,RAは骨破壊などの疾患の進行を止めることが困難で,QOLを大きく損なう疾患とされ,県内外から来院される多くのRA患者様の心身の痛みへの対応も余儀なくされていましたが,生物学的製剤の登場以来,「長い間,関節の腫脹,疼痛に悩まされていたのに夢のようだ」と笑顔で応えてくれる患者様が増えてきたことに大きな喜びを感じつつ,患者様に満足頂ける医療を目指しています.

生物学的製剤はRA治療に革命をもたらした薬剤と言っても過言ではないと思いますが,一方で,生物学的製剤を投与した患者様全員が完全寛解を達成できるわけではなく,また,副作用への怠り無い配慮が必要とされることも事実です.
こうした基本原則をふまえ,当院では,チーム医療により,それぞれの患者様の病態と薬剤の効果を客観的に評価し,患者様のQOL改善に寄与できるよう,多角的な取り組みを行っています.
放射線科との協調
そのひとつは,放射線科の多大な協力によるevidenceに基づく客観的評価体制の充実です.RAの治療過程においてX線撮影は不可欠ですが,当院では,治療経過観察のために行うX線撮影においては,関節病変を数値化して評価をすることを目的に,全例でmodified Total Sharp Score(m-TSS)評価を行っています.その際,より客観性を高めるために,1枚のX線画像を診察に無関係で主観の入らない2人の放射線科の医師が読影します.また,放射線科の医師には,m-TSSに加え,全身のどの関節がどのように変化したかというレポートも添えてRA専門医へフィードバックすることもお願いしています.その他,関節専用MRIの所見も同様に診察の場にフィードバックしています.このような協力体制は,日常診療に有用なだけでなく,治療法の評価や施設内での科学的データ集積にも有用です.
診療情報管理士のサポート
一般的には,カルテ・看護記録・検査記録を患者様ごとに管理することと診断群分類別包括評価(DPC)のためのコーディングが主な診療情報管理士の業務とされていますが,当院では臨床的関与が大きい前者の業務を診療情報管理士に委託しています.そのため,合同カンファレンスにも参加してもらいますし,学会にも参加して発表もしており,開発治験薬の管理業務も行っています.これが功を奏して当院の診療情報管理士が独自に作成したRA患者のデータベースは,治療歴,検査データ,ACRやDASのスコア,m-TSS,HAQスコア,有害事象など基本データが盛り込まれた工夫されたものとなっており,情報検索が容易です.また,この一元化されたデータベースがあるとあらゆる情報が一目でチェックできるというメリットがあり,タイトコントロールにとても有用です.
さらに,当院では診療情報管理士が作成したデータベースからデータを拾い出して解析したり,まとめたデータをパワーポイントに読み込んで患者様へのインフォームドコンセントに活用したりもしています.

以前は,どちらかというとPMSを目的に月ごとにデータを作成・報告していましたが,今日ではリアルタイムなデータ一元化をめざし,診察当日あるいは翌日に検査結果をPCに打ち込んで統合的管理のためのデータベース管理を行っています.
こうした作業のシステム化により,医師はPC画面上で治療経過と疾患管理状況のレビューができますし,患者様への説明,定期検査の確実な実施のサポートにも繋がると思われ,大きなやりがいと責任を感じています.
この仕事を遂行するためにはPCとRAの知識が必要ですが,当院では全医療従事者がRAの知識を深めることを積極的にサポートしてもらえるので勉強にもなり,さらに自分の仕事が臨床の一助になることが感じられ,大きな励みにもなっています.
また,患者様ごとのデータを積み上げることにより,当院の治療実態のデータ化にも繋がるため,さらに上を目指した治療を行うための指針にもなり得ると自負しています.
今後さらに勉強し,より実用性の高いデータベースを作成できるようになれば,その分だけ医師をサポートできることになり,今以上に治療に貢献できると思いますので,医師の指導を仰ぎながら,いっそう努力しようと考えています.
外来クラークのサポート
当院の患者様へのきめ細かいサービスに欠かせないのが外来クラークの存在です.
予診問診票への記入や次回来院アポイントメントの整理・確認といった業務のほか,簡単な聞き取り調査も外来クラークが行い,それを診察に反映するようにしています.医師には言い出しにくいようなこと,例えば,今の薬よりも前の薬の方が自分に合っていたように感じるなどといったことも,外来クラークには気楽に話をする患者様もいます.このような話は,実は治療を行う者にとっては時には非重要なキーになることもあり,非常に助かっています.

私たちの任務は,外来の患者様の治療ステージを正しく把握し,必要な検査が予定どおり行われるよう,看護師や医療ソーシャルワーカー,診療情報管理士と連携し,医師をサポートできるよう心がけることが重要だと考えています.
また,患者様のなかには,治療やRAについてもっと知りたがっている方,治療やご自身の将来,あるいは医療費に不安を抱いている方もいらっしゃいます.そうした患者様の気持ちを医師や看護師に適格に伝えることも私たちの役割だと認識しています.
患者様にやさしく接し,患者様の話に耳を傾ける医師を少しでもサポートすることで患者様のお役に立ちたいと願っています.

生物学的製剤は,関節破壊が進行していない早期,あるいはWindows of opportunityの時期に使用すると患者様にとってのメリットが大きいということは,すでにコンセンサスが得られているとおり,実感しています.また,RAは,その時期ごとに炎症や疼痛を凌いでいかなければならない疾患で,罹病歴が10年以上に及ぶ患者様においても,RA活動性が高い場合にはこの薬剤は有用です.
さらに,抗TNFα製剤には,顕著な臨床的効果がみられない場合でも関節破壊の進行を抑制していることがある点に注目して使用しています.とくにヒュミラ®のPREMIER試験1)では他の生物学的製剤を用いた試験よりも活動性の高い集団を対象としているにも拘わらず,有意な関節破壊進行抑制効果が示されていることは特筆に値すると思います.
今後の生物学的製剤による治療については,安全性の担保を第一に考え,どのようなポイントでどれくらい継続使用するべきかを考える必要があると思いますが,臨床的寛解,画像的寛解,機能的寛解の深さが大きければ大きいほど,また,それらの寛解維持期間が長ければ長いほど,生物学的製剤中止後の再燃リスクは少ないであろうと考えています.
1) Breedveld, F.C. et al. : Arthritis Rheum., 54 : 26-37(2006)

RAの治療においては,患者様自身にしっかりとした病識を持っていただき,治療内容についても理解・納得して頂いた方が治療の成果があがると考えておりますので,当院では,ポイントをわかりやすく簡潔にまとめた資料を用いたり,パワーポイントをPC画面上で示したりしながら十分に時間をかけて説明しています.
ヒュミラ®を投与する患者様には以下のように,薬剤の作用,有効性,副作用などをわかりやすい言葉で説明します
生物学的製剤の投与にあたっては,このようなインフォームド・コンセントのほか,X線検査やCT検査,ツベルクリン検査による結核や間質性肺炎のスクリーニング,血液検査などによる他の基礎疾患や白血球やB型肝炎ウイルス抗原などのチェックを行い,患者様にそれらの検査結果を開示しています.
また,感染予防策としての衛生的手洗い法を指導するとともに,免疫抑制状態では,風邪をひいたときに熱が出にくいなどといったこともありうるので,体調に異変が生じた際には速やかに受診・連絡をして頂くよう促しています.

当院ではよりよい治療を行うことに加え,悩みを共有する人たちが集い学習する「明るく楽しく生き生きと−リウマチの集い」を毎月1回開催し,患者様をサポートしています.RAとその治療法について正しい知識と希望を持ってRAと向き合っていただくことが患者様にとって大切だからです.
また,当院の「リウマチの集い」では,患者様にレクレーションなどの楽しい時間を持ってもらうとともに,患者様と医療者のコミュニケーションを深め,信頼関係を築く一助となることを願って「リウマチの集いピクニック」も企画・実施しています.このピクニックでは患者様と当院のスタッフが数台のワゴン車に分乗して郊外に出かけますが,私は逐次車を乗り換え,ひとりでも多くの患者様とできるだけゆっくり話すよう努めています.
RAの患者様は悲観的になり,気分的に落ち込むことも少なくないのですが,生物学的製剤の登場により,明るく快活になり,笑顔を取り戻すことが可能になったという点から,生物学的製剤の登場は,RA患者様の人生をも変える力があると確信しています.しかし一方で,残念ながらドロップアウトする患者様も存在し,寛解達成率はもちろん100%ではありません.この点が改善される日を夢みて,当院の信条である「患者様の喜びや満足を大切にした医療の提供」にむけて地域と共に歩んで行きたいと日々試行錯誤を繰り返しています.
2010年12月現在
| 名称 | 医療法人和香会 倉敷広済病院 |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県倉敷市東塚5-4-16 |
| 理事長 | 江澤 和彦 |
| 院長 | 江澤 香代 |
| 病床数 | 196床(一般病床 115床,療養病床39床,介護療養病床 42床) |
| 診療科目 | ●内科●外科●整形外科●小児科●泌尿器科●放射線科●リウマチ科●リハビリ科●アレルギー科●循環器科●呼吸器科●胃腸科●歯科 |
| 許可・承認 | 日本リウマチ学会教育認定施設,救急指定(告示有 2次救急),更生医療指定 一般病棟入院基本料(15:1),障害者施設等入院基本料(13:1),療養病棟入院基本料1,救急医療管理加算,特殊疾患入院施設管理加算,看護補助加算1・2,重症者等療養環境特別加算,療養病棟療養環境加算3,栄養管理実施加算,褥瘡患者管理加算,慢性期病棟等退院調整加算2,急性期病棟等退院調整加算2,救急搬送患者地域連携受入加算,地域連携診療計画退院時指導料Ⅰ,がん治療連携指導料,薬剤管理指導料,歯科治療総合医療管理料,地域医療連携体制加算,検体検査管理加算Ⅱ,画像診断管理加算1・2,外来化学療法加算1,脳血管疾患等リハビリテーション料Ⅱ,運動器リハビリテーション料Ⅰ,呼吸器リハビリテーション料Ⅰ,集団コミュニケーション療法料,医科点数表第2章第10部手術の通則5及び6に掲げる手術,クラウン・ブリッジ管理料,CT撮影及びMRI撮影 |
| 総職員数 | 228名 |
2010年12月現在
| 最終学歴 | 日本医科大学卒業 岡山大学大学院医学研究科卒業(医学博士取得) |
|---|---|
| 資格 | 医学博士 労働衛生コンサルタント(保健衛生) 日本リウマチ学会リウマチ専門医・指導医 日本リウマチ財団リウマチ登録医 日本内科学会認定内科医 日本感染症学会ICD認定 |
| 所属学会 | 日本リウマチ学会 日本臨床リウマチ学会 日本内科学会 日本老年医学会 日本認知症学会 日本透析医学会 医療マネジメント学会 日本褥瘡学会 日本感染症学会 日本環境感染学会 日本アロマセラピー学会 日本アロマケア学会 日本緩和医療学会 医療の質・安全学会 日本自立支援介護学会 日本抗加齢医学会 日本プライマリ・ケア学会 |
| 現役員 | 日本リウマチ学会 評議員 (社)浴風会 ユニットリーダー研修実地研修施設選定委員会 委員長 全国老人保健施設協会 理事・学術委員会委員長 岡山県産業振興課 ハートフルビジネスおかやま 幹事 岡山県医師会 理事 岡山県内科医会 役員 岡山県病院協会 理事 岡山県老人保健施設協会 理事・学術委員長 岡山県訪問看護ステーション連絡協議会 理事 山口県老人保健施設協議会 幹事 他 |
| 著書・執筆 | * 知識・技能が身につく実践・高齢者介護 第1巻 検証!改正後の介護保険『療養病床再編と老人保健施設』(共著 ぎょうせい)2008年発行 * 医療経営白書2008年度版『療養病床生き残りへの選択―医療・介護療養病床,介護療養型老人保健施設の経営方策』(共著 日本医療企画) * 介護老人保健施設職員ハンドブック'04~'09年度『老健施設の施設内感染防止対策』(共著 厚生科学研究所 * 認知症診療の進め方-その基本と実践-『嚥下障害』(共著 永井書店)2010年発行 他 |
医学部卒業後,救急医療・重症管理等の内科臨床に励む傍ら,専門である関節リウマチの臨床に,現在まで継続して長年携わり,現在,生物学的製剤等の薬物療法などを中心とした関節リウマチの治療に精力的に取り組む一方,患者団体の支援・交流に力を注ぐ.平成8年現職就任以降,多数の介護施設等の開設を行い,現在複数の病院,老人保健施設,グループホーム,ケアハウス,訪問・通所系サービスなどを運営.「社会貢献」を信条とし,社会保障制度関連および医療・介護等に関する多数の学術的講演,著書,執筆,国庫補助等研究事業等も積極的に活動
注釈:ヒュミラ®の添付文書に定める用法・用量は以下の通りです.
■用法・用量(関節リウマチのみ抜粋)
通常,成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として40mgを2週に1回,皮下注射する.なお,効果不十分な場合,1回80mgまで増量できる.
安全性情報の詳細につきましては,製品添付文書をご参照ください.
製品基本情報「基本製品情報」ページへ

















臨床検査値は悪化していなくても関節破壊が進行している場合や,自覚症状のない関節にもX線検査で変化がみられる場合などがあります.
私たち放射線科の医師は患者様の自覚症状や検査値,治療内容などによる先入観を排除し,また必ずダブルチェックすることによって,客観的なm-TSSが得られるよう心がけています.これらのレポート結果をどのように臨床に取り入れていくかは主治医(RA専門医)に委ねられます.X線検査の画像診断的アプローチを含め,RAへ多角的な取り組みが行われているのは当院の特徴といえます.
当院では平成17年の生物学的製剤臨床導入初期より,全例でのm-TSS評価を始めました.生物学的製剤導入後は,1年経過しても関節破壊が進行しない患者様が増えたという印象があります.また,1割強の少数例ではありますが,骨びらんの修復を認めることもあります.
昨年の夏からは四肢専用MRIも稼働しており,より早期病変を画像的にとらえることが可能になりました.m-TSSと比較検討することによって,いっそう詳細な画像診断所見を主治医に提供できると考えます.早期治療という観点からも,私たちの仕事が患者様に貢献できればうれしく思います.